episode1
さらさらと流れ落ちていく星の砂。
最後の星が落ちた。
『さぁ、目覚めなさいDoll達』
部屋全体に撥条を巻くような音が幾つも鳴り響く。
" カチッ "
撥条を巻く音が止まった。
すると先程まで全く動いていなかった古時計が、ボーン、ボーンと大きな音を鳴らし始めた。
12個目の鐘がなり終わる時1人、また1人とドールの目が開いた。
『貴方は誰?』
『私はダレン・クロウ。今日から貴方達のプロデューサーをさせていただきます』
『…プロ…デュー…サー……?』
ドール達は不思議そうにその言葉を繰り返す。
『…なんで私喋れるの?それに貴方達は何故ここに?』
『知らないわよ。目が覚めたらここにいた』
『姉妹全員が揃うなんて…』
『みんな久しぶりだもんね〜!わーい!』
『今はそれどころじゃないでしょ?』
『私達ご主人様の所に居たはずじゃ…?』
困惑するドール達を傍らにダレンは窓の外を見て呟いた
『おや、そろそろですね』
すると部屋全体が眩い光で包まれた。
光が収まり、ドール達はそっと目を開けた。
『…あれ?目線がさっきと違う…これは一体』
その言葉を遮るようにパンパンと手を鳴らしダレンは言った。
『さぁさぁ、準備は整いましたね。
今日から貴女方は私と契約をして" アイドル "として人々の心を魅力して頂きます』
『…アイドル?』
『こう思ったことはありませんか?人間になれたならどんなに幸せだろう、今のご主人様と人間ならばずっと一緒に、傍に居られるのに、想いを伝えられるのにと。』
そして不敵な笑みを零して1つの大きな瓶を取り出した。
『今がその願いを叶えるとき!
人々を魅了した時、人の心には華が咲く。
その華から滴る雫 " Flower drop "をこの瓶いっぱいに集めていただきます。瓶がいっぱいになった時、貴女方は望みの" 人間 "になることができる。永遠に。』
『私達はドールよ。今喋れていること自体がおかしいし、……アイドル?がどんなものか知らないけど。』
『嗚呼、貴女方は長い眠りについていましたものね。アイドルとは人前に出て歌や踊りなどで人々を笑顔にし幸せを与え、魅了する人の事ですよ。』
『人間の前に出ろって言うの?私達ドールが?動いた時点で騒ぎになるわ!』
『…鏡を1度ご覧になっては?』
その人は鏡を指さした。
ドール達は恐る恐る歩き鏡の前に立った。
そこに写っているのは関節球体人形ではなく"1人の人間の少女"だった。
『体が…まるで本物の" ヒト "みたい…身長も伸びてる…だからさっき目線が変わったのか…』
『貴女方がその体になれるのは月が出ている時間帯のみです。
それ以降は" ただの人形 "に戻ってしまいます。人形になっても喋ったり動けはしますけどね。』
『この瓶を…いっぱいにすれば本当に人間になれるのですね…?願いが叶うのですね…?』
『えぇ、なれますとも。ただしどんなものにも期限は付き物。この砂時計の星の砂が全て落ちるまでがタイムリミットです。』
そう言うと声の主は1つの扉を開けた。
そこには大きな大きな砂時計がさらさらと星の砂を下へと落としていた。
『その" Flower drop "っていうのは心の中に咲く華の雫なのよね?そんなものどうやって瓶に詰めるわけ?』
『おっと、それをお教えするのを忘れておりました!
勿論、その人の心の中ですので取り出せませんよ。取り出したらホラー映画です。
嗚呼怖い。雫のままでは無理ですのでそれを具現化したものを瓶に集めるのです。それがこちらです』
そう言うとまた胸ポケットからキラキラとした小さなものが入った小瓶を取り出した。
『これは…昔奥様が食べていたマカロン?だったかしら…?そのお菓子に似ていますね…』
『色んな色があるのね』
『うわぁ!可愛い〜!』
『これがFlower drop』
『このFlower dropは人それぞれ色が違うのです。滅多に同じ色の方はいませんね。』
瓶を胸ポケットへと戻し言った。
『さぁ、願いを叶えるときがきました。
" 契約 "していただけますね?』
ドール達は顔を見合せ頷いた。
……To be continued
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