𝒸𝒽𝒶𝓇𝒶𝒸𝓉ℯ𝓇 𝓈𝓉ℴ𝓇𝓎 " ℒ𝒾𝓏ℯ "
鼻歌を歌いながら楽しそうにお菓子を作る奥様
新聞を片手に珈琲を飲む旦那様
とても優しい僕達のご主人様
"あなた!クッキーが焼けたわよ!"
嬉しそうに旦那様に奥様は言う
"では早速頂こうかな。君はいつもの紅茶かな?"
"えぇ、ありがとう!"
旦那様は優しく微笑んで奥様の紅茶を煎れ、自分の珈琲をつぎたした
奥様は僕とリズの前に小さな小さなクッキーと紅茶を置いて
" リゼちゃんとリズちゃんもどうぞ "
そう言って優しい笑みを零した
僕達は喋れないし動けもしないのに、旦那様と奥様は本当の子供のように扱ってくれる
僕達は幸せだ
たまにふと、思い出すんだ。
旦那様と奥様に出会った時のことを
初めて出会った時外は雨が降っていた
傘をさして黒い服を着た旦那様と奥様はどこか寂しそうで悲しそうで
ガラス越しに目が会った瞬間、涙ぐみながら奥様は言った
" ねぇ、あなた。
このドール達まるで…まるであの子達みたい"
そう言った奥様の顔を見ながら旦那様はギュッと下唇を噛んだ
そして早足でお店へと向かい扉を開けた
" いらっしゃいませ "
" この窓辺にいる双子のドールを頂けないだろうか "
" ありがとうございます "
旦那様が財布を取り出そうとすると
" お代は結構ですよ。旦那様。"
店主はそう言って僕達を優しく専用の箱へと入れた
店主が箱を閉めるとカチッと鍵をかけた
視界が暗くなりうとうととしたとき店主と旦那様の声が途切れ途切れで聞こえてくる
僕達はその声を聞きながら短い眠りについた
カチャっと箱の鍵を開ける音がして
明るい光が差し込み、僕達の体がふわっと浮いた
" はじめまして。双子のドールちゃん。
今日からここが貴方たちの住むお家よ"
奥様と旦那様は優しく、温かく僕達に笑いかけたのだった。
今でもその時の事を思い出すと心がとても温かくなる。
この幸せがずっとずっと続けばいいのに
そう願うのは罪だろうか
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