𝒸𝒽𝒶𝓇𝒶𝒸𝓉ℯ𝓇 𝓈𝓉ℴ𝓇𝓎 " ℰ𝓁ℯ𝒶𝓃ℴ𝓇 "
私のご主人様はとても優しい老夫婦
2人に出会ったのはもう何十年も前の事…
梅雨の時期には珍しいとてもよく晴れた日だった
その日は2人の結婚式で2人は幸せいっぱいの様子
そこに式場のスタッフが1人やってきた
" 失礼致します。先程ご友人様からお届け物が届きました"
そう言って私の入った箱を2人に渡した
" まぁ、一体誰からかしら?お名前は聞いていらっしゃいますか? ……あら?"
そうスタッフに尋ねた時にそこには誰も居なかった
"ほら、彼女じゃないかい?急遽来れなくなった君の友達!"
"…あぁ!きっとそうだわ!彼女とてもサプライズが好きだから!もう、直接渡してくれればいいのに"
そう言って私の入った箱を開けた
"わぁ…なんて素敵なドール!この子の瞳、とても綺麗だわ"
"本当だね、とても綺麗だ"
2人は私に『エレノア』という名前をつけてとても大切にしてくれた
幸せな時間も苦い時間も一緒に過ごしてきた
でもそんな幸せな時間は長くは続かなかった
だって人間には"寿命"があるから
私達ドールは壊れたりしなければ永遠に居続けることができる
見た目も変わらない、病気もしない。
でも人間は違う
一人一人に"寿命"がある
痩せ細った彼女の手を握りながら彼は言った
"まだまだ一緒に行きたいところがあるんだ。
神様、まだ彼女を連れていかないでおくれ
どうか…どうか……"
彼は涙ながら祈った
こんな時に私は何も出来ない
私は2人に何も恩返しが出来ていない
恩返しができるのならば、願いが叶うのならばどうか…2人を連れていかないで
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